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In the Shadow of Glendalough

日本の皆さま、お久しぶりです。ブログの更新がすっかり滞ってしまいました。Bloomsday 辺りから研究が本格化し、先週末まで埋没していました。明日から指導教官が主催する James Joyce Summer School が一週間に亘ってあるので、とりあえず一区切りです。Summer School には世界中からジョイス学者と主にジョイスを専門とする学生が来るので、彼らと交流出来るのがとても楽しみです! 

 

さて、最近はまりつつあるモノがあります。それは料理。別にグルメではないのですが、無駄にお金を払って不味い料理を食べるのがとても嫌いになったので(アイルランドの料理はアリです)、研究の息抜きも兼ねて少し真剣に自炊をすることにしました。最初は出来合いのものに自分で具材を足して作っていたのですが、最近はゼロから料理するようになりました。今日の献立は「サーモンのムニエル・バター風味椎茸和え」でした。思いのほか上手く出来たので、世にごまんといる他の独身貴族の皆さまの為にもレシピを紹介します(笑)。

 

「材料」(一人用)

 

サーモンの切り身(二枚)

大型椎茸(二個)

ほうれん草(100グラム)

ガーリック(1/4切れ)

バター(40グラム程度)

塩胡椒(少々)

しょうゆ(少々)

*トマト(一個)

 

*オプション

 

「調理方法」

 

① フライパンに油をひき、温まったらほうれん草と大型椎茸を炒める。

② しなってきたら取り出し、フライパンを水でゆすぎバターを入れる。

③ バターが溶けたらサーモンの切り身を入れる。

④ バターが充分温まったところできざんだガーリックを入れる。ガーリックは

風味を加え、サーモンの魚臭さを消すため。

⑤ サーモンがきつね色になったら、椎茸を入れる。

⑥ 頃合いを見て醤油をたらす(たらし過ぎると風味が壊れる)。

⑦ 皿に移し、ほうれん草と一緒に盛る。栄養のバランスと彩色を考慮して

トマトなどを付け足しても良い。

 

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料理って、ちょっとした工夫と手間で格段に美味しくなるから面白いですね。

自分の実力が直に跳ね返って来る点は研究と相通じるものがあります(笑)

また何か上手く料理出来たらアップしたいと思いますが、お勧めのレシピがあれば是非教えてください!

 

さて、前置きはこのくらいにして、今週は先月の週末に訪れた Glendalough を紹介しようと思います。Glendalough はアイルランド語ゲール語)で Gleann Dá Loch

と表記し、「二つの湖がある谷」を意味します [1]。場所はダブリン州直下のウィックロー(Wicklow)州にあります。6世紀の初頭に、高名の聖人ケビンがこの地に修道院を開き、その跡は今でも残っています。史跡としての価値はもちろんですが、さすが隠遁地として最初ケビンに選ばれただけはあり、人里離れた Glendalough はとても風光明媚で、行楽地としても現地人・観光客共に人気があります。

 

最盛期(540年頃)には Glendalough には聖ケビンをたよって多くの巡礼者がダブリンをはじめ各地から来たらしいのですが [2]、時は経って21世紀。お世辞にも敬虔とはいえない筆者は、元大家さんの車に乗って同じ行程を辿りました(笑)その時の光景を同行した元ハウスメイト L. M. さんの写真を交えてどうぞ。

 

Wicklow の山。下に見えるのは盆地ではなく、フィヨルド。元大家の Malachy も映りこんでいる(笑)一説によると、Wicklow はヴァイキングによって興されたらしい [3]。切れてしまっているが、写真の右側には前の日記に出てきたギネス家の邸宅がある。湖がギネスのビール色なのはそのせいなのだろうか!?

 

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Wicklow の丘陵地帯。ここら一帯はボグ(泥炭)地らしい。茶色に見えるのはヒースの花。開花期は6月以降だそうな。ちなみに、Wicklow の山はダブリンからも見え、20世紀演劇を代表する劇作家サミュエル・ベケット Samuel Beckett(1906-1989)のニヒルな描写を始め、多くのダブリンの文豪の作品に現れる [4]。

 

 

 

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Glendalough 近くの谷。写真からは分かりにくいが、高度はかなりある。羊がのどかに草をはむ牧歌的な風景で、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』を思い出したのは、筆者だけではあるまい(笑)

 

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今も残る Glendaough の入り口。弟子が多く住みつくようになってからは、僧院のまわりに「ケビンの独房 Kevin's Cell」と呼ばれる壁が建造された模様。

 

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Glendalough の二つある湖のうちのひとつ、'Upper Lake'。水はとても澄んでいる。ケビンは粗食を心がけていたというが、一体何を食べていたのだろう? 魚ではという意見も出たが、アイルランド人は魚を賤民が食べるものと昔から見なしていた事実を考慮すると [5]、どう判断したものか。

 

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林間の光景。マイナスイオンが出ているかは定かではないが(笑)、色々と浄化されそうである。ちなみに、アイルランドには樫(Oak) が多く、樫に由来する土地名も多い(例えば Kildare = Cill Dara = The Church of Oak)。キリスト教伝来(432)以前から存在する、土着のドルイド教の信者は樫の森で儀式をしていたらしく [6]、聖なる木として樫が崇められいたことが分かる。

 

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Glendalough の墓地。キリスト教の十字架の回りに円を描いた、いわゆるケルティック・クロスが付いた墓碑もちらほらとあるが(円はドルイドたちにとって「神」にあたる太陽を表している)、これはどうやら19世紀後半に興ったアイリッシュ・リバイバル時期のものらしい。

 

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聖ケビンの家とその「台所」。元々は入り口はこの反対側にあったらしい。大きさは、筆者のアパートと変わらないくらい。都会の喧噪を離れ、筆者もここで研究をしたらさぞかし作業もはかどる。。。だろうか?

 

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Glendalough のランドマークとなる Round Tower. この建造物は警鐘台として機能したらしい。普段は倉庫や貯蔵庫として使い、敵襲などを受けると住民は塔の中に逃げ込み、下の入り口から縄はしごを外し、進入路を断った模様。

 

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以上 Glendalough でした。もう少しアイルランドの古代史やドルイド教のことを勉強してから再び訪れたいと思います!

 

最後に、ノーベル文学賞受賞者の北アイルランドの詩人、シェイマス・ヒーニー Seamus Heany (1939- ) が綴った聖ケビンにまつわる詩を紹介します。この日記の下調べをしている最中に偶然見つけました。「全ての道は Glendalough に続く」ではないですが、こういう時空を超えた繋がりを見つけるのはとても嬉しいものです。

 

'St. Kevin and the Blackbird'

 

And then there was St Kevin and the blackbird.
The saint is kneeling, arms stretched out, inside
His cell, but the cell is narrow, so

One turned-up palm is out the window, stiff
As a crossbeam, when a blackbird lands
and Lays in it and settles down to nest.

Kevin feels the warm eggs, the small breast, the tucked
Neat head and claws and, finding himself linked
Into the network of eternal life,

Is moved to pity: now he must hold his hand
Like a branch out in the sun and rain for weeks
Until the young are hatched and fledged and flown.

       *

And since the whole thing’s imagined anyhow,
Imagine being Kevin. Which is he?
Self-forgetful or in agony all the time

From the neck on out down through his hurting forearms?
Are his fingers sleeping? Does he still feel his knees?
Or has the shut-eyed blank of underearth

Crept up through him? Is there distance in his head?
Alone and mirrored clear in love’s deep river,
‘To labour and not to seek reward,’ he prays,

A prayer his body makes entirely
For he has forgotten self, forgotten bird
And on the riverbank forgotten the river’s name. [7]

 

 

 

References

 

[1] http://www.sacred-destinations.com/ireland/glendalough

[2] http://www.catholic.org/saints/saint.php?saint_id=129

[3] http://www.extremeireland.ie/counties/wicklow.html

[4] Cf.) 'Wicklow, full  of breasts with pimples, he refused to consider'

Samuel Beckett, More Pricks than Kicks (London: John Calder, 1934), p. 100.

[5] R. F. Foster, Modern Ireland 1600-1972 (London: Penguin, 1988), pp. 129-30. 

[6] James Joyce, Occasional, Critical, and Political Writing, intro. and notes Kevin Barry, trans. Conor Deane  (Oxford: Oxford University Press, 2000), p. 110.

[7] Seamus Heaney, Opened Ground: Selected Poems 1966-1996 (New York: Farrar, Straus and Giroux, 1999), p. 384.