The Wind that Shakes the Barley

気が付けば3月ですね。2月も早いと思いましたが、3月はもっと早かったです。まさに光陰矢の如し。この調子だと2016年もあっと言う間ですね(汗)。

 

さて、先週は「日本ーアイルランド・フェスティバル」の一環として催された、日本在住のアメリカ人ドキュメンタリー映像作家、イアン・トーマス・アッシュさんの作品『A2-B-C』の上映会に行きました。

(写真はイアンと留学先大学の日本人会の皆さんと撮ったもの)

 

f:id:sonose117:20160307082003j:plain

 

作品は福島の被災地の人々のインタビューからなり、震災から3年経った後でも(映画は2014年公開)放射能被曝をはじめ、様々な不安を抱えながら生活する人々の様子が鮮明に伝わってきます。大手のメディアではあまり報道されない内容がピックアップされており、とても衝撃を受けました。映画の内容に興味がある方は、以下のリンクに作品について語るイアンさんのインタビューがあります。

 

http://webneo.org/archives/21127

 

さて、先月に続いてキアラン・マーフィですが、今月紹介したいのは『麦の穂を揺らす風 The Wind that Shakes the Barley』(2006)というケン・ローチ監督の映画。第59回カンヌ映画祭で最高賞にあたるパルム・ドール賞を受賞しており、名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。『プルートで朝食を』と同じく、『麦の穂を揺らす風』はアイルランドが舞台ですが、前者が1960年代の北アイルランドの物語だったのに対し、後者は1920年前後のアイルランド南部のコーク州が舞台です。

 

f:id:sonose117:20160307084112j:plain

 

キリアン・マーフィ自身コーク州の出身ですが、どちらかというと親英派が多い北アイルランドとは打って変わって、アイルランド南部はコークをはじめ、歴史的にナショナリスト色が強い地域です。映画でも、キアラン・マーフィ演じる若い医者は独立派のアイルランド共和国軍 (Irish Republican Army) に入り、独立戦争(1919−21)の渦中に身を投じます。1922年にアイルランドはイギリスから独立を果たしますが、北アイルランドの6州はイギリスに残り、アイルランドは事実上二つの国に「分断」される形となります。ナショナリスト内で、この分断をもたらした条約を巡って分裂が起き、1922から23年まで、通称「内戦」といわれる抗争が勃発します。映画中でキアラン・マーフィは「条約反対派」、兄は「条約賛成派」につき、それまで独立を目指して共闘していた兄弟は、お互いを敵視するようになるのですが、この映画の醍醐味は独立戦争がもたらした矛盾と悲劇の劇化にある気がします。

 

歴史背景を知らないと分かりにくい箇所もあるかもしれませんが、とても見ごたえのある映画なので、よければ観てみてください。来月は、独立戦争の発端ともなる、イースター蜂起についてご紹介します。

 

BGM:

 

映画のタイトルとなる "The Wind that Shakes the Barley" は、ロバート・ドワイアー・ジョイスという、19世紀のアイルランド学者が書いた曲のタイトルから来ています。曲は1798年に起こったナショナリストの反乱に加わった若者のことを歌っており、映画の内容を暗示させる役目を果たしています。

 

www.youtube.com