Beckett Country

6月になりましたね。日本はそろそろ梅雨でしょうか? ダブリンといえば最近ようやく夏らしくなり、最高気温が20度を超える日が続くようになりました。湿気も少なく、日照時間も長く(午後10時くらいまで明るい)、晴れてさえいれば、アイルランドの夏はとても快適です!

 

さて、今週は在アイルランド日本大使である三好大使の公邸にお邪魔しました。4月に開催された Experience Japan Festival の準備委員会の慰労会を開いてくれたのですが、久しぶりに美味しい日本食(と日本酒)を食べました。相席したスタッフの方々は学生時代アイルランドについて勉強された方が多く、話も弾みました。

 

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(前列右から三番目の、花柄のスカートをめされているのが大使)

 

日本大使の公邸があるのは、ダブリン市街から南東に車で40分ほど行った Fox Rock という場所。深緑の木々が茂る閑静な住宅街で(といっても家は豪邸ばっかり)、さしずめダブリンの田園調布といったところでしょうか。

 

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Fox Rock といえば、20世紀のアイルランド演劇を代表するサミュエル・ベケット(Samuel Beckett, 1906-89) 所縁の地「ベケット・カントリー」として有名です。ベケットが幼少期・青年期を過ごした Fox Rock は彼の作品の舞台ともなっています。

 

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その一つが1957年発表のラジオ劇である『倒れる物すべて(All That Fall)』。主人公であるマディーは夫ダンを迎えにフォック・ロック駅(今は路面電車駅になっている)に向かうのですが、その路程で会う村人たちと取り交わされる会話にベケット的な死生観が透けて見える劇です。文面だけ追うと、題名の通り「落ち込む」会話が多いのですが、ラジオ劇という形式を生かして、端々に言葉遊びを使った性的なジョークがちりばめられていて、うまくネガティブな要素とバランスが取られています。

今年の2月のアビー座公演を観に行ったのですが、ステージの上に配置されたロッキングチェアーに座りながら他の観客と一緒に劇を聞く(放送当時の環境を再現するというのがコンセプトらしいです)というなかなか粋な演出がされていました。

 

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そんなベケットですが、ちょうど今 Mouth of Fire というアイルランドの劇団がシアターX(カイ)国際舞台芸術祭で出張公演しているようです。今回の公演はベケットの短編劇、となかなか珍しいものなので、興味のある方は是非足を運んでください!

 

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BGM: 『倒れる物すべて』の挿入歌である、シューベルトの『死と乙女』第二楽章

 

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